総会屋とバブル 尾島 正洋
久々に面白い本だった。バブル時代に反社に目をつけられズブズブになっていった名門企業が、バブル崩壊とともに摘発されていく様が描かれている。
現在のコンプライアンス主義からは想像できない内容で、今日の株式市場が先人たちの苦労の上にあることがわかりました。
- 反社の総会屋に目をつけられた企業は株主総会で延々と妨害を受け、やめてほしければその引き換えに利益供与を要求された。
総会屋との決別を宣言したソニーの株主総会は13時間を超えた。 - 総務部長は社命で総会屋対策を担当させられた結果、組織ぐるみでなく個人の犯行として逮捕されていった。
バブル崩壊とともに地上げや開発事業から企業が撤退すると反社はハシゴを外された形となり資金ショートし、腹いせに総務部長や役員が脅迫・殺害される事件が相次いだ。 - バブルの恩恵を受けた企業は財テクの名のもとに投資に没頭した。大口投資家から資金を委任された証券会社も右肩上がりの時期はよかったが、株価が下落し始めると損失の補填を行うようになった。
事態を懸念した大蔵省から禁止の通達が出てもバブルの熱狂は冷めず、この顧客サービスは常態化していった。 - 大口顧客のみに補填を行った事実がバレれば証券会社の信用に関わる。この弱みを総会屋が見逃すはずはなかった。
- 時間が経って、損失補填スキャンダルが次々に暴かれていき、商法が改正され、トップの辞任や自殺が起こっても、癒着構造は簡単に変わるものではなく、市場の清浄化には長い年月を要した。