調べたことをまとめます

日本でいちばん社員のやる気がある会社 山田昭男

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日本で一番休みが少ないのに給与は地域内トップレベルというホワイト企業、未来工業株式会社の経営論について創業者が語った本。

具体的にどれくらいホワイトかというと、年間休日140日+有給休暇最大40日、労働時間は一日7時間15分、残業もノルマもない[1]。岐阜県に本社を置きながら平均年収は600万円以上[2]。岐阜県の平均年収は東京都より約150万円低いので[3][4]、東京で言う平均年収800万円の企業だと考えるとかなり高い。年間労働時間を考えると時給もかなり高いだろう。更に「報・連・相」を禁止しており、社長が各部署に口を出さず、仕事の裁量を大きく社員に任せている。

 

なぜこのような経営が可能なのか。これを実現した社員のモチベーションをいかに上げるかという経営方針について、涙ぐましい努力と熱い哲学が書かれている。内容を簡単に紹介する。

 

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 そもそも、社員にやる気がないということの裏には“不満”がある。私は、その不満を一つひとつ消していくのが社長の仕事だと思っている。給料は安い、休みはない、何から何までがんじがらめの会社で働いていても楽しいはずはないし、そんな会社のために努力しようという気が起きてくるはずがない。だから、私ははずせる制約はできるだけはずそうと考えている。

 

日本の中小企業をみると、「社員を低賃金で長時間こき使ったほうがトクだ」と考えている経営者が少なくない。だが、本当にそうだろうか。中小企業には凡人が集まっている。ズバ抜けた能力をもっている者が多いわけでもない。その社員に不満をもたれたら、ただ給料をもらうために会社に来ているだけという状態になり、目も当てられない結果を招くことになってしまう。

 せいぜい、社員に不満をもたれないようにして、それなりにがんばってもらうしかないのではないか。

 

じゃあ、やる気を起こさせるにはどうするのか?社員にしてみれば、高い給料がいちばんだろうが、それには限度がある。儲けが減ったからといって給料を下げれば、社員は生活設計もできない。安定した給料を支払っていくことが最優先課題だから、給料は世間相場よりややよいぐらいの水準を目指すことになる。

それ以外に何ができるかといえば、それが労働時間の短縮というわけだ。それなら、みんなが頭を使って工夫すれば実現できるはずだ。

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ここで面白いのは、創業者が知ってやっていたのかは分からないが、ハーズバーグの理論を効率的に利用していることである。

「ハーズバーグの動機づけ・衛生理論」を簡単に言うと、人間には苦痛を避けようとする動物的な欲求と、心理的に成長しようとする人間的欲求の2つがあるという考え方である[5]。

 

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          図 ハーズバーグの二要因理論

 

この理論に当てはめて未来工業を見てみると、苦痛を避けようとする動物的な欲求は見事に満たされ、心理的に成長しようとする人間的欲求も恐らく満たされていることが推測できる。

「不満足」を招く要因

◎会社の方針と管理 → なるべく制約をはずすことを目標している

◎監督、監督者との関係 → 報連相禁止

◎労働条件、給与 → 休みは日本一、給与は安定して地域トップレベ

?同僚との関係 → 不明。だがこれだけ好待遇ならきっと良いはず

◎個人生活 → 労働時間が一日7時間15分なら個人生活も充実

 

「満足」を招く要因

◎責任、承認 → 報連相禁止で裁量が大きい

○達成、成長 → 不明だが、裁量が大きければ達成や成長も大きいはず

○仕事そのもの → 不明。だが「日本ではじめて」の製品を作ろうとしていることから、それなりにあるはず

?昇進 → 不明

 

 

ここまで見て、これだけ社員思いの経営をしていた創業者はさぞ人として立派なのだろう、と思うかもしれないが、この点に関しては全くそんなことはなく、むしろかなり奔放で酷いこともしている。

まず創業者は元々社長子息で、新卒で親の会社に入り、若い頃は会社で二番目に給料を多くもらっておきながら頭の中は劇団のことばかりだったようだ。(当時日本は演劇全盛期の時代だった)

地元の仲間と劇団「未来座」を結成し、座長兼舞台監督を務めた。午後4時には会社を抜け出して劇団へ行き、給料もほとんどつぎ込んでいたらしい。15年以上もそんな生活を続け、結婚しても変わらなかったため、とうとう親から勘当、会社をクビになっている。

クビになってからは劇団仲間で会社を立ち上げ、親の会社時代の得意先に売り込んでいたようだが、かなりえげつないやり方の営業もしており、「俺ね、クビになってしまってね、これしか売るものないけど、これ買ってくれないとメシが食えんのよ。ちょっとカバンの中見せようか、ロープ入っとんのよ。買ってくれないなら、ここでぶらさがるで・・・」という具合である。

 

やはり何かを成し遂げるには、野心というか、己を貫き通す力が必要なんだなぁ。

 

 

 参考資料

[1] 「日本一休みが多い会社」「創業以来赤字なし」未来工業の創業者死去 - withnews(ウィズニュース)

http://withnews.jp/article/f0140730007qq000000000000000W00a0401qq000010536A

[2] 未来工業の年収給料【大卒高卒】や20~65歳の年齢別・役職別年収推移|平均年収.jp

http://heikinnenshu.jp/kogyo/miraikogyo.html

[3] 東京都の平均年収や生涯賃金・年齢別年収推移・職業別年収|年収ガイド

http://www.nenshuu.net/prefecture/pre/prefecture_pages.php?todoufuken=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD

[4] 岐阜県の平均年収や生涯賃金・年齢別年収推移・職業別年収|年収ガイド

http://www.nenshuu.net/prefecture/pre/prefecture_pages.php?todoufuken=%E5%B2%90%E9%98%9C%E7%9C%8C

[5] ハーズバーグの動機づけ・衛生理論 |モチベーション向上の法則

http://www.motivation-up.com/motivation/herzberg.html