調べたことをまとめます

こんな街に「家」を買ってはいけない 牧野知弘

いわゆる読者の不安を煽る系の本。

まだ家を買うつもりもないけれど、下記の本の帯が目についたので読んでみた。

  • 東京などへの通勤に1時間以上
  • 駅からバスを利用する
  • 住宅地内の傾斜がきつい
  • 1970~80年代に開発された

 

帯にある通り、本書では上記の条件に当てはまる地域の住宅は資産価値の下落が著しいという内容がメインで語られている。これらの住宅は、高度経済成長期にいわゆるニュータウンとして開発された当時の新築を、子育て世代が高値で買ったものだが、40年経った現在では20%程度の価値でしかリセールできないこともあるそう。

かつて日本では、人口の増加と都市部への人口移動は右肩上がりであり、住宅の需要は増える一方で、「今家を買わなければ一生買えない」とされていた。そのため通勤に片道1時間半かける人も珍しくなかったようだ。具体的には、日本の生産年齢(15~64歳)人口は1990年をピークとし、人口は2010年頃まで増え続けていること[1]、またここ30年に渡って毎年10万人規模の人が東京へ移住しているデータなどが示されている。

しかし、人口が減少傾向にあり不動産の価値が上がる見込みもない現在、郊外のニュータウンに移り住む人はおらず、必然的に1970~80年頃に移り住んだ世代が取り残されることになる。当時子育て世代として新築を購入した30~40代も、今は70~80代。

 

かつて家を出て駅に出て電車に乗り降りするのは夫だけで、妻の多くは専業主婦で基本的には家から出なかった。そのためどの駅からも徒歩や自転車で来られる中心に店舗が立ち並び、毎日住民達が買い物に来ていた。ところが、ここで育った子どもたちは都心の会社に勤め、都心部の住宅地で家庭を築き、もうこの地には帰ってこない。若い頃は気風も良かった商店主達も、住民と共に高齢化し、店主の引退と共に店仕舞い。元気に買い物に出ていた専業主婦も近くのスーパーに車で出かけて食材を調達するようになる。ところが、今度はその専業主婦達が後期高齢者の時代を迎えると、車が無ければ買い物にも行けないが、高齢のため運転が厳しい。そんな住民が増えると近隣の商業施設は閉鎖され、さらに暮らしにくくなる。子供の数も減少し、学校は廃校、子育て世代が生活できなくなり、ますます街は高齢化が進む。

 

また、こうしたニュータウンの住宅は、親世代からすれば高値で買ったのだから資産として相続してほしいと思うものだが、子供からすると維持費もかかり面倒の元となってしまう可能性がある。

マンションでは月々の共益費がかかり、他の住民の滞納問題もある[2]。

戸建ての住宅では固定資産税を払い、修繕費を積み立てる必要がある。定期的に水道を流し、風を通すなどの管理も必要だ。空き家率が30%を超えるような地域では空き家にしておくだけで犯罪の温床になる危険もあり、かと言って解体を頼むなら約150万円程度の費用がかかり、更に住宅が建っていれば固定資産税はが6分の1になる減免措置が適用されたのに、安易に更地にすると税金がかさんでしまう(実際は雑種地などに申請して3割程度の減額を受けることも可能なようだ)。

 

ある時期に一気に開発された住宅地には同じような世代が住んでいて、その世代が老いる頃には街も荒廃していくというのは、冷静に考えれば当然である。本書は要するに、住宅を絶対的に価値のある資産として信用することはバブル期の古い常識であり、株や金融商品と同様に常に資産価値の増減が有ることを考慮にいれるべきという、極めて当然のことを言っている。ニュータウンのように一気に人気が高まった地域は下落が激しいし、人口が減少の一途をたどる田舎では住宅の価値も緩やかに単調減少していく。

 

現在日本では8軒に1軒が空き家。住宅の供給過剰により、そもそも住宅全般は資産価値が下落していく中で、せめてどのような所に住めば良いのか。この問いに、筆者なりの解がちゃんと示されていて好感が持てた。

  • 新陳代謝が激しい(移り住んでくる人もいる)街に住む
  • 子供が相続する頃には住宅の資産価値は無いものと思って住宅を買う

詳しくは説明しないが、大まかに上記のようなことが書かれていた。その他、相続をする時は相続人を1人にして揉めないようにする、土地が売れない時はダメ元でお隣さんに打診してみる(いわゆる「隣の土地は倍出しても買え」というやつ)、などの小手先の技が紹介されている。

 つまらないまとめではあるが、資産運用においては何をするにも新陳代謝、持続可能性、早期再建が重要となるらしい。

 

参考文献

[1] 日本の人口の推移 - 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/dl/07.pdf

[2] 「持ち家」リスクを甘く見ている人が招く不幸 – 東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/154728